花影
夕焼けが髪にさわる
帰り道風が鳴いた
言いたいこと胸の奥で
小さくまだ揺れていた
鳥居越し空を見れば
薄紅だけ残っていた
笑うたびにひび割れてく
わたしの影連れてゆく
ひらひら花びらが
ほどけるように落ちてゆく
ねえねえこの痛み
名前もないまま消えないの
咲いて咲いて花影
夜のふちを染めてゆけ
泣いて泣いて月明かり
ほんとの声を照らしてよ
舞って舞って袖の風
ほどけた夢をさらってゆけ
春がわたしを置いても
この歌だけは消さないで
黒板の白い跡に
置き去りの昨日がいた
誰もまだ知らないまま
小さな傷息をする
神社から鈴の音が
遠く長く響いていた
叶うことは少なくても
願うたびに強くなる
ゆらゆらかんざしの
先で夜風が揺れている
ねえねえこの心
壊れそうでも離さない
咲いて咲いて花影
夜のふちを染めてゆけ
泣いて泣いて月明かり
ほんとの声を照らしてよ
舞って舞って袖の風
ほどけた夢をさらってゆけ
春がわたしを置いても
この歌だけは消さないで
遠い祭りの音がする
帰れない夏が手を振る
それでもまだここにいる
わたしは今を歌いたい
咲いて咲いて花影
夜のふちを越えてゆけ
泣いて泣いて月明かり
明日のほうを照らしてよ
舞って舞って袖の風
ほどけた夢を抱きしめて
誰かのためじゃない声で
わたしはわたしを歌うだけ