003

星のない地図

色即是空

終電ひとつ前駆け上がる階段
ポケットの通知は鳴らないまま
改札ガラスに二人ぶんの影
わたしだけ少し遅れて揺れた
ビル風のなかでほどけた約束
確かめるたびに薄くなる文字
大丈夫なんて短いひとこと
いちばん遠くで胸に残った

ねえどこまでなら
きみに届くだろう
言いかけた言葉が
まだ胸で光る

星のない地図を夜にひらいて
きみの名前を小さく灯す
行き先なんていらない今は
ただ見失わずにいたいだけ
まちがうたびに近づくような
そんな明日でもかまわないよ
帰れない場所がもしあるのなら
そこにわたしの線を引くよ

コンビニの白が横顔をさらう
ミルクティーの缶冷えたままで
くだらない話続けるあいだ
本題だけうまく飲み込んでいた
青になるたび信号を渡る
スクロールみたいに流れる街で
きみが笑うたび世界のピントが
一瞬だけずれてもう戻らない

もう戻れないと
わかっているのに
今夜の会話だけ
まだ終わらない

星のない地図を夜にひらいて
きみの名前を小さく灯す
行き先なんていらない今は
ただ見失わずにいたいだけ
まちがうたびに近づくような
そんな明日でもかまわないよ
帰れない場所がもしあるのなら
そこにわたしの線を引くよ

たった一駅ぶん
離れるだけで
こんなに夜は
広くなるんだね
手を振る仕草の
そのあとばかり
フィルムみたいに
繰り返してる

星のない地図も朝に向かえば
白いページに変わっていくよ
なくしたものを数えるよりも
きみと歩いた距離をなぞる
見えないものほど信じていたい
やっと今ならそう言えるから
帰れない場所がもしあるのなら
そこを未来と呼べばいい

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