星のない地図
終電ひとつ前駆け上がる階段
ポケットの通知は鳴らないまま
改札ガラスに二人ぶんの影
わたしだけ少し遅れて揺れた
ビル風のなかでほどけた約束
確かめるたびに薄くなる文字
大丈夫なんて短いひとこと
いちばん遠くで胸に残った
ねえどこまでなら
きみに届くだろう
言いかけた言葉が
まだ胸で光る
星のない地図を夜にひらいて
きみの名前を小さく灯す
行き先なんていらない今は
ただ見失わずにいたいだけ
まちがうたびに近づくような
そんな明日でもかまわないよ
帰れない場所がもしあるのなら
そこにわたしの線を引くよ
コンビニの白が横顔をさらう
ミルクティーの缶冷えたままで
くだらない話続けるあいだ
本題だけうまく飲み込んでいた
青になるたび信号を渡る
スクロールみたいに流れる街で
きみが笑うたび世界のピントが
一瞬だけずれてもう戻らない
もう戻れないと
わかっているのに
今夜の会話だけ
まだ終わらない
星のない地図を夜にひらいて
きみの名前を小さく灯す
行き先なんていらない今は
ただ見失わずにいたいだけ
まちがうたびに近づくような
そんな明日でもかまわないよ
帰れない場所がもしあるのなら
そこにわたしの線を引くよ
たった一駅ぶん
離れるだけで
こんなに夜は
広くなるんだね
手を振る仕草の
そのあとばかり
フィルムみたいに
繰り返してる
星のない地図も朝に向かえば
白いページに変わっていくよ
なくしたものを数えるよりも
きみと歩いた距離をなぞる
見えないものほど信じていたい
やっと今ならそう言えるから
帰れない場所がもしあるのなら
そこを未来と呼べばいい