005
ガラスの街
色即是空
夜更けの廊下に足音が響く
カーテンの隙間で高架がうなる
古い新聞紙にコーヒーの輪がある
だれかの話だけ今夜も先に着く
信号が変わるたび
景色がずれていく
まちがえた言葉でぼくらは出会って
窓の明かりまで夜によく似てた
割れないガラスの向こうで笑って
ふれられないまま少しだけ近かった
交差点ごとに風向きが変わる
ショーウィンドウには見知らぬ影
きみが残したメッセージの跡だけ
雨ににじむまで読まずにいた
答えを言う前に
朝が来てしまう
きみを探すたびぼくは薄くなって
帰れないんじゃない戻らないだけさ
地図のない道に靴音を落として
知らない景色へまだ歩いていた
もしも世界がただ
継ぎはぎの夜でも
消えかけた灯りに
まだ熱があるのなら
まちがえた言葉が夜を照らしていて
星のない空にも道はつづいていた
消えない傷跡を灯りみたいにして
ぼくらはそれでもまだ歩いていた