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さよならなんかじゃ足りない

色即是空

西日 滲み ひび割れた窓に
きみの横顔 水面みたいに
揺れて 消えて 触れれば遠い
さよならなんかじゃ 到底およばない

放課後 廊下の奥 斜光
無口なロッカー 濃くなる残像
蛍光灯 明滅 低温の脈動
冗談ひとつで延命する今日
上履き 下駄箱 鍵穴 階段
どうでもよかった景色が祭壇
ありふれたまま 痛みだけ倍化
きみがいたせいで世界に幻影が入った
「また明日」 軽い五文字
なのに胸の底では重い墓標に
なるような気がして 笑うほどに
夕焼けが余計に赤くなる放課後に
ノートの隅 文字 書いては未遂
声になる前の感情だけが居座り
青春は瑞々しい? いや違い
青すぎて脆い 脆いから痛い
風に鳴るカーテン カタカタ 肩先
触れたいわけじゃない ただこの形
崩したくないだけ なのにまた先
行く季節ばかりが正しくて腹立たしい

笑って誤魔化すほど
深く刺さる鼓動
言葉にすると壊れそうで
黙るたび増える残響

さよならなんかじゃ足りない
足りない まだ足りない
この胸のざわめき全部
やわい台詞じゃ語れない
「またね」なんかじゃ届かない
届かない まだ届かない
きみがいたこの季節ごと
一言じゃとても送れない
さよならなんかじゃ足りない
足りない まだ足りない
夜に変わるその手前で
名前のない痛みを抱いていたい

改札 階段 街灯 雑踏
白い息にならない季節の焦燥
コンビニの灯り 月の模造
街は何も知らず 通常どおりの鼓動
きみは明日の話 新しいスニーカー
くだらない噂 誰かのインスタ
ぼくは頷いた うまく合図した
でも今日が沈む音だけは聞いていた
踏切 鳴り止まない警報
会話は千切れ 沈黙だけ継投
言えば変わる でも変わると壊れるの境界線上
立ち尽くす影法師 夕映えの迷宮
好きとか嫌いとか 安い分類
この痛みはもっと深い水脈類
見えないくせに街ごと侵食する類
きみの不在ひとつで色まで変える種類
イヤホンの奥 掠れるビート
歩幅は同じでもずれてくシーン
大人ぶるほど 子どもな自意識
平気なふりの精度だけが上がっていく日々

思い出にするには
まだ熱すぎる余熱
最後のチャイム以後も
胸の中だけ鳴り止まねえ

さよならなんかじゃ足りない
足りない まだ足りない
この胸のざわめき全部
やわい台詞じゃ語れない
「元気で」なんかじゃ救えない
救えない まだ救えない
きみがいたこの季節ごと
一言じゃとても送れない
さよならなんかじゃ足りない
足りない まだ足りない
暮れきる前の空みたいに
青のままで痛みを置いていきたい

行かないで
じゃ足りない
好きだよ
でも少し違うみたい
もっと正しい名が
ある気がしていた
その名を見つける前に
季節だけ先に行った

バンドみたいだ 不揃いの感傷
ベースみたいに低く沈む心臓
ギターみたいに細く裂ける残響
スネアみたいに急かす秒針の心象
窓ガラスの向こう 群青の群像
制服のしわに潜む未完の文章
若さは無敵じゃない むしろ損傷
触れた瞬間に壊れそうな硝子の構造
きみの横顔だけで充分
だったはずなのに今日だけ不十分
喪失は静かだ だから充分
息を奪う 音もなく景色を塗り替える群
提出しそびれた本音の束
机の中で眠る未送信の歌
笑顔のままじゃ送れない夜だ
だからせめてビートの上でだけは剥き出しだ
西日が死んで 藍に変わる
チャイムの亡骸が空気に残る
綺麗じゃないからこそ刺さる
青春ってそういう傷の呼び名だろ

さよならなんかじゃ足りない
足りない ほんと足りない
笑って終われるほど
軽い日々じゃなかったみたい
「またね」なんかじゃ届かない
届かない まだ届かない
きみがいない明日なんて
想像するだけで色がない
さよならなんかじゃ足りない
足りない まだ足りない
最後のチャイムのあとまで
言えなかった言葉で鳴っていたい

西日 残響 校舎の向こう
手を振るきみ 遠のく歩幅
物語より 少しだけ不格好
だから忘れられない
さよならなんかじゃ足りない

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